学術

日本の岐阜県飛騨市神岡町にある重力波望遠鏡「KAGRA」が少し残念なことになりそう。

日本の岐阜県飛騨市神岡町にある重力波望遠鏡「KAGRA」が少し残念なことになりそうだ。KAGRAは重力波という、時空(重力場)の曲率(ゆがみ)の時間変動が、波動として光速で伝播する現象を観測する装置である。外部からの影響が少ない、岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山の地下200mに建設され、2019年秋の完成後、調整、試験運転を経て、2020年2月25日に観測が開始された。

同じような重力波望遠鏡は、米国のLIGO、イタリア、フランス、オランダ、ポーランド、ハンガリー、スペインの欧州6か国の研究所による科学的コラボレーションによるVirgoが有名である。KAGRAはそれに追い付け追い越せというプロジェクトだったのだが、残念ながら目標としていた測定感度を出すことが難しいということになり、重力波観測が難しい状況になってしまった。

重力波の初観測は、2015年9月14日にアメリカの2台のLIGOで同時検出された。観測されたのは、ブラックホール連星の合体からの重力波。これは、物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が100年前に予言した「重力波」の直接的な証拠が、世界で初めて確認されたものだった。この業績に携わった研究者は、2017年に「LIGO検出器および重力波の観測への決定的な貢献」という理由でノーベル物理学賞を受賞している。

重力波が発生する、超新星爆発、中性子星の合体、ブラックホールの合体、といったイベントは滅多に発生しない。しかし、望遠鏡の感度を高めることにより、より遠方の重力波を観測できるようになる。例えば150年に1回の重力波を観測できる装置が、感度を上げることによって、1年に数回、重力波を観測可能になる。

重力波望遠鏡は感度を上げることがということがとても重要であるが、KAGRAは当初の目標としていた感度よりずっと低いものにしかならない、ということのようだ。感度が低いということは、検出できないということではなく、検出できる可能性が想定よりずっと低く(例えば150年に1回の頻度)なってしまった、ということになるのだと思う。

期待が大きかっただけにとても残念なことではあるが、今後の動向についてもウォッチしていきたい。